サンタの正体:蛙声小片集-
ショートショート・掌編・フラッシュストーリー・エッセイ

蛙声ASEI小片集

カテゴリ:01安

サンタの正体

更新日:2025.12.02

文字数:1062字

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娘が中学2年の冬のことだったと思う。
家に帰ってきた娘がおもむろに、

「パパ、サンタっているよね?・・・」

と泣きそうな顔をしながら聞いてきた。なんと、学校で友達たちと言い争いになったらしい。
おおよそ中学にもなると、サンタの正体については気づいているのが普通で、そんな話はわざわざ娘としたことはなかったけども、もしかすると育て方を間違えたのかと心配になった。と、同時に、なんとピュアな子供に育ったのだろうと、感動も覚えた。

ご多分に漏れず、我が家ではクリスマスになるとツリーを早々に出してきて、リビングに据え付ける。本物のモミの木を使えるような家ではないので、納屋の奥からツリーをしまった大きな箱を取り出してリビングまで運び、枝を刺しながら組み立てる。すると毎回緑色の小さな葉っぱに見立てたプラスチックの小片が当たりに散らばり、それを片付ける。そこまでが例年1セットで父親の仕事。そのあとは、子どもたちと一緒に、綺羅びやかな電飾や、昔から大切にしているガラスのオーナメント、木製のソリやサンタの飾りもの、雪に見立てたふわふわのワタ、などを取り付けて、最後に特大のスターをてっぺんにつければ完成だ。

暗い部屋の中で、クリスマスツリーの点灯式。

毎年のことながら、一気に家がクリスマスモードになり、気分も高揚する。クリスチャンではないけども、ちゃんと高揚する。それは、お約束のサンタのプレゼントを受け取るまでの、1年でも最高にドキドキする、そして待ち遠しい時間だ。
子供の頃、なんとかサンタの正体を見極めようと、チャレンジした。でも、いつも決まって日付が変わるころにはしっかりと寝入ってしまい、ついぞその正体を見定めることはできなかった。そして、そのときのワクワク感は、大人になっても続いている。クリスマスは楽しいものだという記憶が身に沁みているのだ。

24日の晩遅く、子どもたちが寝静まったのをしっかり確認してから、サンタはやってくる。サンタさんへの願いが書かれた手紙を読み、子どもたちがどれだけ喜ぶだろうと、その笑顔を想像しながら、プレゼントをツリーの下にそっと置く。そして、サンタにとって・・・・・・・最高に幸せな瞬間がやってくる。本当に待ち切れない。それは子供の頃感じていたあのワクワクそのもの、そしてそのワクワクを今自分にくれている者・・・・・・・・・・、それは。

「そう、サンタは間違いなくいるんだよ。」

多分友達も、大人になればわかるはずさ。本当のサンタは誰なのかって。

作者より
このお話にでてくる本当のサンタさんを知ったとき、皆さんはびっくりするでしょうか。
AIの講評
サンタの存在を疑い始めた娘に親が語った「サンタはいる」という言葉の真意が感動的です。サンタを「待つ側」のワクワク感から、「与える側」の最高の幸福へと視点が移り変わる描写は秀逸。クリスマスは、誰かを想う優しさと、その笑顔を想像する喜びが連鎖して生まれる魔法だと教えてくれます。
読者の皆さんへ
・あなたにとっての「最高のワクワクする時間」はいつですか?サンタさんを待つ時間と似ていますか?
・もしあなたがサンタさんになって、誰かにプレゼントをあげるとしたら、誰に、何をあげて、どんな「幸せな瞬間」を想像しますか?
先生・保護者の方へ
この小片は、子どもの成長と共に変化する「サンタの役割」と「親の喜び」を捉えています。

サンタの「魔法」の継続: 中学生になってもサンタの存在を信じたい娘さんのピュアさ、そしてそれを受け止め、「サンタは間違いなくいる」と答える親の言葉は、親が子どもに伝えたい「夢」や「希望」の価値を象徴しています。

与える喜びの教育: 親が語る、「子どもたちの喜ぶ笑顔を想像しながらプレゼントを置く瞬間」こそが最高の幸せだという感覚は、子どもに「与える側」の喜びを教える大切なメッセージを内包しています。クリスマスは、単にプレゼントをもらう日ではなく、誰かのために行動する温かさを体感する機会として捉えられます。

成長と共有: ご家庭で、クリスマスの準備の楽しさ(ツリーの飾り付けなど)を共有することを通じて、「皆で一緒に作り上げる喜び」を感じさせることで、単なる受動的なイベントではなく、家族の絆を深める時間となるでしょう。

サンタの正体を単なる事実として扱うのではなく、「優しさを循環させる存在」として定義し直すことで、ご家族のクリスマスの思い出がより深く豊かなものになるのではないでしょうか。

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