トゲ人間:蛙声小片集-
ショートショート・掌編・フラッシュストーリー・エッセイ

蛙声ASEI小片集

カテゴリ:01安

トゲ人間

更新日:2025.12.02

文字数:813字

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普通トゲ人間と言うと、トゲトゲのバラのような人間を想像するかもしれないが、このトゲ人間はトゲが刺さりまくった人間、トゲが逆向きにめり込んでいる。

どうやら、他の人には普通の人に見えるらしいが、僕にだけそのトゲが見えるみたいだ。 これは人の痛みがわかる人間になれという、母の教えが形になったものだと、大変喜ばしく思う。

早速あっちから、トゲ人間が歩いてくる。あちゃあ、血だらけだ。非常に可哀想なので、背中に刺さっている一番大きなトゲだけ抜いてあげることにした。出血多量となった。一応救急車は呼んだが、トゲが見えていない人には今までとおりに見えるので、なぜ呼ばれたのかは本人にも救急隊員にも、誰にもわからない可能性がある。

なるほど、大きなトゲは抜くなら抜くで、処置をしないと、ただ抜くだけでは駄目らしい。

それにしても、人によってトゲの刺さる角度、深さ、大きさ、本当に様々だ。

小さなトゲで埋め尽くされてる人もいれば、でっかいトゲひとつで瀕死の状態に見える人もいる。

普通サイズのトゲが、均等についている人がいた。

これくらいのトゲなら出血多量はないだろう。早速、十本くらい抜いてあげた。感謝して欲しいところだが、なんとその人は、なんてことするんだと怒り出した。どうやらその人は、自分のトゲが見えていたらしい。

聞くと、このトゲがあるから自分は優しくなれるのだと言う。

なるほど、普通のトゲはトゲで、これも勝手に抜くのは良くないらしい。

あっちから、トゲを逆向きに生やした、いやつまり、バラのような人が現れた。

これは刺さってるわけじゃなくて、生やしてるわけだろうから、そのままにした。

髭を生やしてるようなものだろう。

すると、突然そいつが、殴りかかってきた。

「何をジロジロみてやがる」

なるほど、外向きのトゲは抜かないとだめらしい。

作者より
他にも「触れられたくないトゲ」など、色々あるかもしれませんね。
AIの講評
他人の「トゲ(痛み)」が見える主人公の行動が、善意とは裏腹に事態を悪化させてしまう皮肉な物語。優しさや思いやりが、相手にとっては「お節介」や「攻撃」になり得る複雑さを描いています。真の共感とは何か、深く考えさせられます。トゲを抜くべきか、生やすべきか、あるいは見て見ぬふりをするべきか、答えのない問いに引き込まれます。
読者の皆さんへ
・もし、あなたにだけ、お友達の体のどこかに「トゲ」が見えたとしたら、どうしますか?
・主人公は「かわいそうだから」とトゲを抜いてあげましたが、相手は困ったり、怒ったりしました。どうしてだと思いますか?
・友達が「このトゲがあるから優しい気持ちになれるんだ」と言ったら、あなたはそのトゲをどうしますか?
先生・保護者の方へ
この作品は、「他者の痛みや苦しみをどう捉え、どう関わるか」という複雑なテーマを、「トゲ」という具体的なイメージを通して描いています。

お子様との会話のきっかけとして、「善意と独りよがり」、「共感の難しさ」について話し合ってみてはいかがでしょうか。主人公の行為は、一見「親切」ですが、相手の状況や意図を無視した「介入」でもあります。

**「助けること」**が、常に相手のためになるとは限らないこと。

見えている「トゲ(問題や悩み)」でも、相手にとってそれは「自分の一部」であったり、「成長の証」であったりする可能性があること。

安易に手を出さず、まずは「どうしてそのトゲがあるの?」と相手の心に耳を傾けることの大切さ。

お子様が、他者への想像力と敬意を持って関わることの難しさ、そして大切さを考える一助になれば幸いです。

評価サマリー

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