一人で生きていくということ:蛙声小片集-
ショートショート・掌編・フラッシュストーリー・エッセイ

蛙声ASEI小片集

カテゴリ:04エッセイ

一人で生きていくということ

更新日:2025.12.02

文字数:1020字

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自分の力だけで、お金を稼いで生きていく。

上司からとやかく言われることもないし、非常に気が楽。
俺は十分一人でやっていける。
独立してお金が稼げるようになると、そんな気持ちになったりする。

と、ベッドに横になりながら考えていると、目の前にランプがあった。
ゼットライトというやつで、アームが曲がって伸び縮みする。
伸縮部分には、バネが使ってあって、アルミ製の軽い筐体で出来ている。
リベットでヒンジ部分がしっかりと補強されていて、形を保っている。

そう、僕はこのバネ一つ、自分で作ることはできない。
リベットも作ることはできない。
今被っている毛布だって作ることはできない。
この枕も、家の壁紙も、窓ガラスも、何もかも僕一人では、とてもじゃないけど、
いや、とてもじゃないどころじゃないほどできない。

結局、一人で生きていくなんてことはありえない。
ご飯も食べれない。
一人で生きていくなんて、よく言えたもんだ。

君が今日、たった1日で触れたもの見たもの、それだけでもその向こう側に数十万、いや 数百万の、現在そして過去の他人がたくさんいるわけだ。
いや君、世の中にたった一人しかいなかったら、そもそも君は生まれてないから。
生まれた時から 少なくとも3年間は、自分でご飯をまともに食べることさえできなかった。

つまるところ一人で生きていくなんていうのは、ただの言葉遊び。しかも相当悪趣味だ。
人とあまり関わりたくない、というのはわかる。
それは飲み会が嫌いだとか、賑やかなのがあまり好きじゃないとか、そういう類の話にすぎない。

全くもって一人で生きていく、と言った場合、野生児や ジーニーのことに思いを馳せなければならない。

彼らは 言語を話すこともままならず、思考能力も欠落し、そもそも一人で生きていくという哲学的な問いを、頭の中に思い浮かべることさえ、出来ないかもしれない。だからこの問いそのものが、生まれない。

一人で生きていくなんて、全くもって不遜な考え方だったと、当たり前のことに気づく。往々にして、一人で生きていくという言葉を発する時、それは自分は人よりも優れているという思いが混ざっている。非常に傲慢な考え方だろう。でも僕は、これまでそのように一人で生きていけているということが、自負心として存在していたことを認めなければならない。そしてそれについて、今日、深く考察したことを心に留めなきゃいけない。

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